記憶術で用いるイメージについて

キューバーのつぶやき

こんにちは。メモアカの青柳です。

まず、受験生の皆さんお疲れ様です。受験に向き合わなければならないこの1年間は大変だったと思いますが、終わったときの爽快感は今までにないものだったのではないでしょうか?皆さんの頑張りが良い結果に結びつくことを祈っています。

筆者自身もようやく今年度の大学の授業が全て終わり、久しぶりに落ち着いた生活を取り戻しつつあります。その中で、これまでの自分の考え方について振り返ることが多くなってきました。この過程で自分の頭の中のクセを言語化していくと、これを嚆矢としてこれから学ばなければいけないことが分かるような気がします。

そこで今回はタイトルにもある通り、記憶術に用いる「イメージ」について書いていこうと思います。メモリースポーツや目隠しルービックキューブの上級者の多くは、その重要性を強く認識しているでしょう。本記事は「イメージ」の有用性を改めて再確認し、改善の狼煙を上げていくものとなっています。

記憶術におけるイメージとは

記憶術では必ずといっていいほど、ストーリー法を使用します。ストーリー法は記憶術の基本といってもよいでしょう。

ここでストーリー法の例を挙げましょう。以下のような単語を漏れなく順番通りを覚えるとします。

机 → りんご → 植物

この3つの単語からストーリーをつくるというのがストーリー法です。例えば、筆者ならば

の上にあるりんごから植物が生えた

とします。ストーリーには任意性があるので、各自自由に作ってもらって構いません。このように単語間の連関をみつければ、記憶事項は覚えやすく忘れにくいものへと変貌します。この脳の性質を利用したのがストーリー法というわけです。

上に挙げた例は3つだけだったので、ストーリー法を用いれば(あるいは、用いなくても)覚えることができたのではないでしょうか。しかし、メモリースポーツや目隠しルービックキューブのように、覚える対象が増大するとストーリー法だけでは不十分になるケースが多いです。さらに実践の場では、上に挙げた例のように具体的な単語のみを覚えるとは限りません。「象徴」といった抽象的な言葉や「走る」といった動詞も出てくるでしょう。そういった用語も覚えられるようにするために、ストーリー法とイメージを併用することが重要になります。

イメージというのは何も難しいものではありません。上に挙げた「机の上にあるりんごから植物が生えた」というストーリーだったらその情景を思い浮かべるということです。アウトプットするときはこのイメージを思い出しましょう。ストーリー偏重からイメージ偏重に切り替えることで「なんとか思い出せた」が増えていくものです。

イメージするうえでの課題

記憶術としてイメージを用いる場合、何をどうイメージするかが大事になります。例えば、先ほどの例では「りんご」という単語を覚えました。このとき手のひらサイズのりんごをイメージするよりも、机からはみ出るぐらいのりんごをイメージした方が遥かに記憶しやすいでしょう。または、数えきれないほど多くのりんごがある状況をイメージしても同様な効果を得ることができます。

物事をストーリー法で覚える際、以下のように工夫すると覚えやすくなるとされています。

・覚える対象を身近なものに置き換える。

・覚える対象は現実とはかけ離れた性質を持つようにデフォルメする。

この2点を行うことでより短時間で効果的に覚えることが可能になります。こういった「些細な心がけ」が人間の記憶力に大きな影響を与えるものです。

しかし、メモリースポーツや目隠しルービックキューブをしばらく練習していると、上の2点を施しにくい記憶対象が出るようになります。それは主に「抽象的な言葉」や「動詞および形容詞(形容動詞)」です。前者には「象徴」や「正義」、後者には「ジャンプする」や「美しい」などがあるでしょう。以下、本記事ではこれら2種類の記憶対象に対して、イメージ方法を議論したいと思います。

抽象的な言葉のイメージ

「抽象的」とは「頭の中で考えていて具体性がない」という意味です。このため、抽象的な言葉を覚える際は上に述べた「身近なものに置き換える」という作業が鍵になります。

例えば「平和」という用語について考えてみましょう。この用語はどのような言葉に置き換えればよいでしょうか。

一番考えられる方法としては平和のシンボルである「鳩」に置き換えることです。これはメモアカのSDGs記憶でも紹介されています。このように「身近なものに置き換える」ことを行えば、ストーリー法とイメージの併用が可能となり、より覚えることが容易になるでしょう。

さらにもう一点工夫を施すとすれば、鳩の色にもこだわることでしょう。場合によっては「鳩(=平和)」と一緒に、「カモメ」という単語も覚えなければいけないことがあるかもしれません。このときに、鳩の色を考慮して記憶しておけば、アウトプットのときに「どっちだっけ?」となることが少なくなるでしょう。筆者ならば「平和」から黄色を連想します。よって置き換えた鳩の色も黄色にしてしまえば、より思い出しが楽になるのではないでしょうか。

このように単語に修飾を施すと覚えやすさも増大します。

動詞・形容詞のイメージ

次に動詞・形容詞について考えてみましょう。これらはモノではないため、イメージをする際は意識的もしくは無意識的に何かしら主語を付け足しているはずです。

例えば「走る」という動詞を考えます。先ほども述べたように、この動詞単体ではイメージはできません。走っている主体を付け足して初めてイメージ化が可能となります。

以下のような2つの単語を覚えるとしましょう。

机  走る

このとき多くの人は「机が走る」というストーリーを組立て、その情景を思い浮かべることでしょう。それが可能なのは「机」という単語が動詞の主語として存在しうるからです。これが、動詞単体ではイメージができないという意味です。よって動詞・形容詞を覚えるときに工夫を施すべきなのは、それらよりもむしろ主体となる単語の方になります。

ここまで議論を進めていけば工夫の仕方は今まで通りでよいことになります。上の例「机 → 走る」であれば、「机」を自分が普段使っている勉強机等に置き換えてもよいでしょう。そこからさらにデフォルメを施して、机の脚を非常に長く設定しても良いはずです。

また動詞をイメージするときは「動きをつけたほうが良いのか?」という疑問もあるでしょう。もしかしたらこれは人それぞれなのかもしれません。筆者としては静的なイメージでよいと考えています。というのも、動きというのは物理学でいうと力学変数の時間発展です。すなわち、動きをイメージしている間、多少なりとも時間が経過していることになります。それはそのまま記憶時間を長くすることに繋がります。メモリースポーツや目隠しルービックキューブでは記憶時間も競う対象となっています。したがって、記憶時間の減らすためにも静的なイメージが重要になるのではないかと考えています。他のメモアカメンバーがこれをどのように考えているのか知りたいです。

まとめ

今回は「記憶のイメージ」についての記事を書きました。参考になったかどうかはわかりませんが、自身の考えを言語化してまとめると、自分でも新たな発見があって非常に面白いなと思いました。

記憶術はまだまだ発展途上であり改善の余地はまだまだ存在するのでしょう。そしてその余地とは意外と地味なところにあるものです。メモリーアスリートや目隠しルービックキューブに励む方はそういう「なんてことない」ことに意識を向けて日々練習を行っているということを感じていただければ幸いです。