“場所法”と“ペグ法” どちらが良いのか?

知識バンク

メモリースポーツは記憶術を使用する競技ですが、記憶術と言っても「場所法」、「ストーリー法」、「ペグ法」など様々な方法があります。

メモリーアスリートの中には「場所法」をメインとして使用している人がおそらく一番多いと思いますが、種目によってミックスして使用したり、ストーリー法のみ、ペグ法のみで記憶する場合もあると思います。
勉強に活かしている人の中には、場所の数が足らずペグ法やストーリー法をメインで使用している人もいるかもしれません。

各記憶法について知らない方のために↓で簡単に記憶法を説明します。

各記憶法について
場所法:事前に準備した場所に覚えるものを置いて記憶する方法
ストーリー法:覚えるものでお話を作り記憶する方法
ペグ法:事前に作った数字のイメージに覚えるものを関連させて記憶方法
   (数字ではなく、トランプなどでも代用は可能)

自分の場合は、各競技で使う記憶術を分けています。

場所法
スピードカード、ロングカード、スピードナンバー、ロングナンバー、2進数、単語記憶、イメージ記憶(1分)、スポークンナンバー

ストーリー法
顔と名前、イメージ記憶(5分)、アブストラクトイメージ記憶

ペグ法
歴史の年号

という感じです。「歴史の年号」はストーリー法的な要素もありますが、数字を手がかりとして記憶しているので、ここではペグ法としています。

多くのメモリーアスリートは自分の好みで使う記憶術を決めているとは思うので、基本的に自分の好きなものを使用しても良いのですが、今回は科学的な見地でどの方法が良いのか見ていきたいと思います。

実はどの記憶法が一番効率的なのかという研究は今から40年以上前の1980年にJournal of Experimental Psychologyというジャーナルに論文が発表されています。原文を読みたい方は以下のリンクから全文が読めるので読んで見てください。

「The Effectiveness of Four Mnemonics in Ordering Recall」
Henry L. Roediger III /Journal of Experimental Psychology 1980
http://psychnet.wustl.edu/memory/wp-content/uploads/2018/04/Roediger-1980_JEPHLM.pdf

非常に簡単に要点だけ摘んで紹介をしていくと、パデュー大学の大学生150人の被験者に対して「反復」、「イメージ化」、「ペグ法」、「場所法」、「リンク法(ストーリー法)」の5つの方法について、20個の単語を記憶し回答するという比較実験を行っています。

20個の単語をそれぞれの記憶法で、記憶した後すぐに解答した場合と記憶後24時間後に解答した場合、いくつの単語を思い出すことができるのかという非常にシンプルでわかりやすい実験を行っています。
解答についてもStrict Score(厳密に採点した場合)とLenient Scores(甘めに採点した場合)の両方で実験をしています。
※Strict Scores:スペルミスや単数形と複数形の違いなどもNG Ex. ✕:「Car」と「Cars」
Lenient Scores:ニュアンスがあっていればOK Ex. ○:「Car」と「Vehicle」

他にも20個の単語のいくつ目の単語が間違えやすいかなども分析をしています。

10ページにも渡る論文をざっくりまとめて結論から言うと、
「場所法」>「ペグ法」>「リンク法(ストーリー法)」>「イメージ化」>「反復」
という結果になっています。
※実験の結果として部分的には、スコアが逆転している場合もあります。

このような結果から「ペグ法」よりも「場所法」の方が短期的にも長期的にも有効だということがアカデミックな見地からもわかっています。メモリースポーツは短期的な要素が強く、勉強や学習は長期的な要素が強いと思うので、場合によっては使い分ける方が良い場合もあるとも思いましたが、この実験からは「場所法」一択という感じの結果ですね。

記憶のシステムに迷った時や記憶について疑問を持った時、記憶に関わらず科学的な知見がほしい場合は、論文を読んで見るということをやってみると面白いかもしれません。