Japan MLCを振りかえって

メモリーアスリートのつぶやき

12月20日にJapan Memory League Championship(Japan MLC)が行われ、優勝することができた。今回は大会について振り返っていく。

Japan MLCへの意気込み

2020年はコロナウイルスの影響でメモリースポーツの大会が次々と中止になってしまっていた。今年は日本一を決める10種競技の大会である「ジャパンオープン」も開催できず、 長い間大会がなく目標がないため、モチベーションを失ってしまう選手もいるという状況だった。

今回のJapan MLCも、元々3月に開催される予定だったが延期となり、年内に何とかリモートで開催できるようになったという状態だった。

今年はJapan MLCが日本で一番のメモリーアスリートを決める唯一の大会となったのだった。

自分は日本記録は10種競技とSCC(トランプ記憶のみの大会)で持っているが、「日本チャンピオン」というタイトルはSCCシーズンチャンピオンのタイトルのみで、1つの大会で獲得できる日本チャンピオンのタイトルは持っていなかった。

メモリースポーツを始めて1年と半年弱、全力で取り組んできた自分にとってこのJAPAN MLCで優勝して日本チャンピオンになることは悲願だった。大会当日は「絶対に優勝してやる」という気持ちで大会に臨んだ。

グループリーグ

今回の大会は、出場する12人名の選手が、4つのグループに分けられ、各グループ1位の選手と各グループ2位の中で成績の良かった上位2名の選手が決勝トーナメントに進出できるというルールだった。

自分はグループCで、同グループは、日本人のNori Tanaka選手と台湾代表のfunDunFish選手だった。

初戦はNori Tanaka選手との対戦で、日本では有名な選手なのでよく知っている相手だった。相手選手が先攻でNumbersを選び、自分は38秒で覚えた。記憶中に2桁ミスがあり結果は78桁であったが、相手のスコアが69桁であったため勝利することができた。

1か月前にSCC(トランプ記憶の大会)に出場したものの、対戦形式であるメモリーリーグの大会は5月のリモート形式の大会から半年ぶりだった。SCCは対戦形式ではないため、自分の成績だけを考えれば良いのだが、メモリーリーグの大会は1対1の戦いであるため、相手選手のことを分析し、どのように戦うかを考えて記憶しなければいけない。

さらに、大会にはかなり気持ちが入っていた(入ってしまっていた)ということもあって、初戦は緊張してしまっていた。

他のスポーツでは自分の士気を上げ、気合を入れアドレナリンを出すと、いつもの練習より良い動きができるということがあるが、メモリースポーツは体を動かさない「静」のスポーツなので、常に冷静の状態で脳内を落ち着かせる必要がある(武道に近いのだろうか)。熱い気持ちを持っていても、心拍数を上げずに心の底にとどめていなければいけない。

静かに集中しなければいけない.

そのことに改めて気付かせられた初戦の第1セットの後は、Cards,Images,International Namesの3セットとも勝ち4セット連取で初戦を終えることができた。

その後、台湾代表のfunDunFish選手との対戦では、Wordsで49というハイスコアを2回出せたこともあり、4セット連取し、グループリーグを無傷の全勝で終えることができた。Wordsがいつもの練習より調子がよかったので、「決勝トーナメントでは武器になるな」と思っていた。

決勝トーナメント

決勝トーナメント初戦(ベスト6)は日本人のshinhiro選手との対戦だった。2019年のTokyo MLCでは準決勝で対戦し、そこでは勝利したものの苦戦した相手なので、かなり気を引き締めて試合に臨んだ。

自分はグループリーグ1位通過だったので、3セット連続で選べる権利を持っていた(ベスト6は、3セット先取で勝ち上がり)。自分が得意で相手選手があまり得意ではないInternational Names,Words,Cardsを選び、危なげなく3連勝して準決勝に進出することができた。

準決勝は、前回大会Japan MLC 2018で優勝した日本チャンピオンのNaoya選手との対戦。順当にいけば当たる選手だと思っていたが、いざ対戦となると想像以上に緊張感が込み上げてきた。

前回大会優勝の相手選手はシード権があったので、決勝トーナメント1回戦がなく、シードで準決勝からで1試合休むことができた。さらに準決勝からはサプライズという種目があり、大会オリジナル問題を覚えなくてはならない。サプライズというその名の通り、全選手が事前に問題を知らされていないので、60秒の間でどう覚えるのかを判断し、即興で覚えて対応しなくてはならない。サプライズ問題ではあるが、問題が出た瞬間に驚いていたら貴重な60秒間がなくなってしまう難しい種目だ。

記憶力以外にどう覚えるのかを判断する発想力も求められる。自分は地頭が良い方ではなく、発想力を求められるようなことは苦手である。

一方、対戦相手のNaoya選手は自分より競技経験も長くとにかく賢い。しかし、相手に先行種目の決定権を取られているため、サプライズ種目で負けるということは敗退を意味していた。頑張って気合で覚え勝つしかない。

そして、サプライズ種目が始まった。なんと最初に出てきたのはアルファベットの「U」、次々と覚えているとアルファベットの記憶であった。途中でビックリマーク「!」なども含まれているため、記憶中には気づかなかったがアルファベット26個+「!」などの記号4つの記憶であった。

自分はどんな問題にでも対応できるように場所法ではなくパーソン法(人に動作をさせて覚えさせる記憶法、勝手に自分でそう呼んでいる)を使った。
自分はアルファベットをその頭文字が付く英語の言葉に変換し30人の事前に準備した人とストーリーを作って覚えた(最初の「U」の記憶であれば、1人目の人がUFOに連れ去られてるイメージなど)

自分はパーフェクトを出し、相手選手もパーフェクトを出した。しかし、自分は57秒で覚えたのに対し、相手選手は、60秒フルに使って記憶したため、サプライズは勝利することができた。(正直、回答が終わった時は相手はもっと早く覚えているだろうから駄目だと思っていた)

その後はお互いが選んだ種目をお互いが取り、2-1の状況になった。あと1ゲーム勝てば決勝進出の場面で相手選手はImagesを選んできた。

「この対戦で落としても、次の対戦は自分が選ぶ種目だし(その日絶好調のWordsを選ぶ予定であった)、一方相手は負ければ敗退のがけっぷちの状況なので、「パーフェクトを狙って安全にいこう」と思っていた。

自分は23秒でパーフェクトを出し、相手は17秒で覚えたが3枚外してしまったので、勝利し決勝トーナメント進出が決まった。次の種目を選ぶ心の準備はできていたが、かなりホッとした。サプライズ種目で勝てたのが肝だった。

世界チャンピオンとの決勝戦

準決勝が終わり、それから5位決定戦や3位決定戦が行われるため決勝戦まで1時間半ほど時間が空いた。そのため準決勝戦の試合が終わった後すぐにリラックスするため外に出て歩行瞑想をした。歩行瞑想とは歩きながらする瞑想のことで、歩く中で両足の裏が地面に触れる感覚に全部の意識を集中しながら歩くというものだ。(これが結構難しい)
さらに、家に帰った後もまだ時間が空いていたため10分間ほど呼吸に意識を集中させるシンプルな瞑想を行った。

全集中

自分は、大学受験の勉強していた時(高校はスポーツ推薦なのでちゃんと勉強するのが大学受験で初めてだった)に時計のカチカチする音がうるさくて、集中できず時計を捨てたという話があるほど(薄い内容の話だ)、じっとしていることが苦手で集中力のない人間なので、このように自分の意識を一点に集中させるトレーニングを時々行っている。(まさに全集中の呼吸だ)

そしていよいよ決勝戦の時がきた。決勝戦の相手は2012年と2018年に10種目で世界チャンピオンになったことのあり、メモリーリーグの2015年のメモリーリーグの世界選手権でも世界チャンピオンになっている大会最強のJohannes Mallow選手だ。何回か練習で対戦したことがあるが、毎回ボロ負けで勝ったことはなかった。

決勝も第1種目はサプライズだ。決勝戦のサプライズの問題は数式が並べられていた問題だった。途中でシグマ(Σ)の記号とかが出てきて「高1から数学やってねえからこの気持ち悪い文字は何だ!わかんねえよ!」と思いつつ、数字の部分を何とか変換し覚えたが、19枚目で60秒間が終わってしまい、結果22-28で第1ゲームは負けてしまった。
(ちなみにJohannes Mallow選手は脳科学の勉強を大学院でやっていたため数式は自分よりもはるかに馴染み深かった!)

決勝のサプライズ問題

高校時代の自分はスポーツクラスで、スポーツクラスの先生には数学を教えられる先生がおらず、強制的に文系の道になってしまったので、「なんで高校時代のスポーツクラスに数学教える先生いなかったんだよ!」と大会には全く関係ないどうでもいいことに苛立ちつつ(自分は集中力のない人間のため、重要な試合でこのようなことを考えてしまう)、次のセットために気持ちを切り替えた。決勝戦は4セット先取した選手が勝利するため、準決勝と比べてまだ多くのチャンスが残されていた。

自分が先攻であったので、2セット目は、相手選手が苦手なInternational Namesを選び手堅く勝利することができた。これで1-1だ。
次の3セット目で相手選手はCardsを選んできた。これまでの相手選手との対戦でCardsでは勝ったことがなかったため、相手選手は自信をもって選んできたのだろうと思った。しかし、準決勝の後に1時間ほど瞑想した自分は集中力を極限まで高めており、大会最高記録の24.93秒で52枚のカードを全て覚え相手選手は25秒であったため勝利した(24.93秒は10種目の大会やSCCも含めて日本人で最も速いタイム)。

4セット目では、その日絶好調であったWordsを選び勝利し優勝まで王手をかけたものの、5セット目は相手選手がNumbersを選び、そのセットは取られてしまった。これで3-2となった。次勝てば悲願の優勝。ここで自分は自信をもってCardsを選んだ。

最後のセットは25.92で52枚を完璧に覚えた。相手選手は27秒だったためそのセットを勝利しJapan MLC 2020を優勝することができた。

大会で最も多くの試合をしたにもかかわらず、決勝の最後のセットまで高いパフォーマンスを発揮できたことが、優勝できた理由であったと思う。準決勝の後にそれまでの疲労を回復し、さらに集中力を高めることができたことも良かった。そして何より毎日何時間もトレーニングしてきたためスタミナがついていたのであろうと思う。

競技を始めてから1年と半年、この日のために必死にトレーニングしてきたことが報われた最高の瞬間であった。